日本語版発刊辞

『創作と批評』インターネット日本語版刊行に寄せて


創批社では、季刊『創作と批評』創刊40周年を迎えた今年、特別事業の一つとして、季刊誌のインターネット日本語版を開設する運びとなりました。サイバー空間に限定されるうえに、韓国語版の内容の一部のみを翻訳して提供するにすぎませんが、遠い道のりを行く初めの一歩としては、非常に意味深いと考えております。

「創批」は、40年前の出帆当時から世界的な視角を追求してまいりました。この努力が蓄積され、それを具体化していくことで、「韓国(=南韓)」と「世界」を媒介する二つの中間次元についての認識を新たにしたと思われます。そのうちの一つが、南北に分断された韓半島をともに見るという次元であり、もうひとつが韓半島と世界の相互作用から東アジアないし東北アジア地域がもつ特別な意味という次元です。

近年、「創批」誌面において東(北)アジアに関する議論が急激に増えてきたのは、認識上のこういった進展を反映してのことです。それは明確に「進展」であると言えるでしょう。自身が属する広域地域を知り、取りまとめることは、過去においても重要ではありましたが、グローバル化とともに地域化が進んでいる今日の現実においては、さらに切実なになっていると思われます。

特に、私たちがいる東アジア地域は、莫大な潜在力量と豊かな共同の文明遺産にもかかわらず、19世紀以来、分裂と戦争、植民地または半植民地的支配に苦しめられた後、近年に再び、世界で最も活気のある地域の一つとして浮上してきています。世界経済における比重はいうまでもなく、国際政治においても自らの声をあげはじめた国々が多くなり、今後、この地域がいかにして互いに疎通し、連携できるのかによって、人類の文明が大きな影響を受ける形勢にあります。

しかしその反面、実際になされている疎通や連携は、たとえばヨーロッパ地域に比べてみたとき、非常に後れをとっているといえるでしょう。EUの行路を手本にとるのであれば、その点は今後も変わらないだろうと思われます。しかしながら、東アジアには東アジアなりの資産と底力があり、これらを活用した東アジア特有の道があるとするなら、この道を探し出し、開拓するために、私たち東アジア人は―特に知識人は―知恵を集める作業が急がれます。このために、なによりもまず対話と討論が重要ですが、互いが相手の考えを知り、語法を知る相手とのあいだで進められる討論こそが、生産的でありうるでしょう。

『創作と批評』の誌面を通じてなされる韓国側の議論と実践の一部のみでも、まず日本語を知る読者の皆様にお伝えしようとしたのは、こういった文脈からのことです。私たちの事情をお知らせすることで、日本(および日本語読者)側から韓国(および韓国語読者)側の努力に助言が返ってこないかとの期待がなきにしもあらずですが、そのように直接的に得るものでなくとも、日本および東アジアの知的・文化的活力に、少しでも役に立てればと思います。

最後に、『創作と批評』は文学誌も兼ねた総合誌として、詩、小説といった文芸創作に少なくない誌面を割いていますが、翻訳上の負担が大きなこれらの作品を、全く同じ比重でもって紹介することはできないという点を付言したいと思います(2006年春号は、いったん、作品の翻訳はしないで出発します)。これによって、韓国で進行している知的・文化的模索の重大な一部がぼやけてしまうといったことはありうるであろうと思われます。この点につきましては、今後、条件の許す限りにおいて改めていきたいと考えている次第です。まずは不足を抱えながらの出発ではありますが、地域内外の読者の皆様に暖かく迎えていただき、呼応していただけるよう、よろしくお願い申し上げます。

 

2006年 4月 『創作と批評』編集人
白樂晴
FacebookTwitterGoogle+Share